私はイナゴをまた買った。いよいよ食べる。
揚げイナゴを食べるにあたり、一つ私は思っていることがあった。
それは、もうイナゴを嫌いになりたいということだ。
ここ一ヶ月は、とにかくイナゴのことばかり考えていた。そして、もうイナゴはいないことがわかった。これでもうあきらめが付くかなと思った。
しかし、だめだった。相変わらず、イナゴが頭のなかを埋め尽くしていた。
離れようとしても離れられない。ならば、目一杯イナゴを食べれば、もう見たくないと思えるんじゃないかなと思ったのだ。
だから、今から24時間、イナゴ以外のものを食べないことにしようと思った。イナゴダイエットだ。イナゴはタンパク質に富み、糖質は少ない。糖質制限ダイエットには適切な食材のように思えた。
買ってきたイナゴ。なお、このアジアスーパーストアで買ってきたイナゴは「タイワンツチイナゴ」という種類のイナゴである。私の中のスタンダードイナゴであるコバネイナゴと比べるとかなり大きい。
食べると・・・、うーん、こんなものだっただろうか。やはり大きさがかなり違うこともあり、私の知るイナゴの味とはだいぶ違うように思えた。
しかしもう24時間はこれしか食べない。もう決めたのだ。
体重は84.25kgであった。ここからどれくらい減るだろうか。
はっきり言って気が滅入っている。このタイワンツチイナゴは、コバネイナゴと比べるとかなり不味い。しかし、イナゴを嫌いになるためだ。仕方のないことだ。
二匹を食べてもう嫌になり、会社に行った。
会社で仕事をしている間、何度かゲップをしたが、そのゲップも、タイワンツチイナゴの臭いがした。コバネイナゴの良い香りとは全く違う、気分の悪さだ。
そして昼休み。私はいつもオフィスの自席で昼食を食べているが、いきなりイナゴを出して食っていたら、こいつは頭がおかしくなったのではないかと思われてしまうだろう。だからオフィスの隅の休憩室でこっそりと食べた。持って行く時は、中が見えないように、コンビニ袋にイナゴを入れて持って行った。
やはり2匹で手が止まった。タイワンツチイナゴは不味い。しかもかなり油を吸っており、まるで油そのものを飲んでいるような嫌な感じがした。もっと少量の油で炒める感じにした方が良かったのだろうか。
タイワンツチイナゴの不味さだが、アクの強さが挙げられる。わたしは美食家ではない凡人なので、この味の原因がアクのせいなのかどうかははっきりとはわからない。しかし、強烈にエグい味がした。
もうだめだ。
気が付くと、わたしはコンビニに行き、サンドイッチとたい焼きを買っていた。イナゴダイエットは失敗だ。サンドイッチを食った後、我に返り、やっと写真を撮った。
家に帰って体重を測ってみると、85.85kgであった。なぜ増えたのだ。そんなに食ってないのに。油の多さが悪かったのだろうか。
イナゴダイエットは失敗した。
しかし、私はイナゴを嫌いになることができた。
いや、正確には違う。私は、タイワンツチイナゴを嫌いになったのだ。今もコバネイナゴを食べたい。日本のイナゴを食べたい。でも、今度こそ、「やれることは全てやった」という実感を持てたと思う。
たぶん私は来年も、イナゴ採りに行くだろう。コバネイナゴを食べるために。また一年間待たなければならないが、それまでの時間を、ゆっくりと待つことにしよう。
また来年まで、さらばだ。
<2015年のイナゴ 完>
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